噛む力や飲み込む力の低下に合わせて選べる食事形態。それぞれの特徴とメリット・注意点を知り、安全でおいしい食事を実現しましょう。ゴールデンウィークでご家族が帰省される機会に、食事形態の見直しを始めてみませんか。
食事形態とは、食材の硬さや大きさ、まとまりやすさを調整した食事の種類のことです。加齢や病気により噛む力(咀嚼力)や飲み込む力(嚥下機能)が低下した方が、安全においしく食事を楽しむために欠かせない概念です。
適切な食事形態を選ぶことは、単に食べやすさの問題にとどまりません。誤嚥性肺炎は高齢者の肺炎の約7割を占めるとされ、食事形態の選択は生命に直結する重大な判断です。厚生労働省の「人口動態統計」でも、肺炎は日本人の死因上位に位置しており、その中でも誤嚥性肺炎の割合は年々増加傾向にあります。
4月末の南河内地域は日中25℃前後の初夏の陽気になり、ゴールデンウィークを前に外出の機会が増える時期です。富田林市の寺内町や羽曳野市の壺井八幡宮では藤の花が見頃を迎え、ご家族でのお出かけを楽しまれる方も多いでしょう。ただし、外出先での食事(外食やお弁当)は普段と異なる食事形態になりやすく、誤嚥リスクが高まる場面でもあります。この時期だからこそ、ご家族と一緒に食事形態について考えてみることをおすすめします。
食事形態は一般的に、以下の5段階に分類されます。上から下に向かって、食べやすさが増していきます。それぞれの特徴を理解することが、適切な食事形態を選ぶ第一歩です。
特別な調整を加えていない通常の食事です。噛む力と飲み込む力に問題がない方が対象です。
たとえば当店の4月28日の昼食献立では、「豚肉と豆腐の玉子とじ」「大根のあんかけ」「じゃが芋と鶏肉の炭火焼風炒め」「三色炒め煮」「たたきごぼう」の5品をお届けしています。常食ではこれらを食材本来の大きさと硬さのままお召し上がりいただけます。
食材を2〜3cm角の一口サイズにカットした食事です。大きな食材を噛み切る力が弱くなった方に適しています。ユニバーサルデザインフード(UDF)の区分では「容易にかめる」に近い位置づけです。
一口大は、義歯(入れ歯)が合わなくなったり、歯周病で歯がぐらつくようになった初期段階で選ばれることが多い食事形態です。当店でも「まだきざみ食にするほどではないけれど、大きい食材が食べにくくなった」というお声から一口大をお選びになるケースが多くあります。
きざみ食は食材を5mm〜1cm程度に細かく刻んだ食事です。噛む力がかなり低下した方に提供されます。
きざみ食は「刻めば安全」と思われがちですが、実はそうではありません。日本摂食嚥下リハビリテーション学会でも指摘されているように、細かく刻んだだけの食材は口の中でまとまりにくく、小さな食片が気管に入りやすくなるリスクがあります。きざみ食を安全に提供するには、とろみをつけたり、あんをかけたりして食塊形成を助ける工夫が不可欠です。
食材をミキサーにかけてペースト状にした食事です。噛む力がほとんどなく、飲み込む力も弱い方に適しています。
食材をペースト状にした後、ゲル化剤で再成形した食事です。介護食の中でも最も進化した形態の一つで、当店でもムース食メニューを提供しています。
5つの食事形態の違いを一覧でまとめました。ご家族やケアマネジャーさんとの相談にお役立てください。
| 食事形態 | 食材の大きさ | 対象の目安 | 見た目 | 誤嚥リスクへの配慮 |
|---|---|---|---|---|
| 常食 | 通常サイズ | 噛む力・飲み込む力に問題なし | 食材本来の形 | 通常 |
| 一口大 | 2〜3cm角 | 噛み切る力が弱い | 常食に近い | カット済みで噛み切り不要 |
| きざみ食 | 5mm〜1cm | 咀嚼力が大幅に低下 | 食材が分かる程度 | とろみ・あんで食塊形成を補助 |
| ミキサー食 | ペースト状 | 咀嚼・嚥下ともに困難 | ドロドロ状 | とろみ調整で流れ込み防止 |
| ムース食 | 成形済み | 嚥下困難だが食事を楽しみたい | 食材を再現 | 適度な弾力でまとまりやすい |
食事形態の基準として医療・介護の現場で広く使われているのが、日本摂食嚥下リハビリテーション学会が策定した「嚥下調整食分類2021」(学会分類2021)です。この分類は病院、介護施設、在宅介護の間で共通言語として用いられ、利用者の方が施設を移動しても同じ基準で食事形態を引き継げるように設計されています。
また、日本介護食品協議会が定めるユニバーサルデザインフード(UDF)の区分とも対応関係があります。UDFは市販の介護食品に表示される基準で、スーパーやドラッグストアで介護食を購入する際の目安になります。
| 学会分類コード | 名称 | 形態の目安 | 対応する食事形態 | UDF区分(参考) |
|---|---|---|---|---|
| 0j | 嚥下訓練食品0j | 均質でゼリー状 | ゼリー食 | かまなくてよい |
| 0t | 嚥下訓練食品0t | 均質でとろみ状 | とろみ食 | かまなくてよい |
| 1j | 嚥下調整食1j | 均質でやわらかいゼリー・プリン状 | ムース食 | かまなくてよい |
| 2-1 | 嚥下調整食2-1 | ピューレ・ペースト・ミキサー食等 | ミキサー食 | 舌でつぶせる |
| 2-2 | 嚥下調整食2-2 | やわらかい粒がある | やわらかきざみ食 | 舌でつぶせる |
| 3 | 嚥下調整食3 | 形はあるが押しつぶせる | やわらか食 | 歯ぐきでつぶせる |
| 4 | 嚥下調整食4 | 硬さ・ばらけやすさに配慮 | 一口大・常食 | 容易にかめる |
この分類は入院中に言語聴覚士(ST)が嚥下評価を行い、退院時に「コード3相当」などと申し送りされるケースが一般的です。退院後の在宅生活で配食サービスを利用される場合は、この申し送り情報をもとに適切な食事形態を選ぶことができます。詳しくは「嚥下と食事形態の選び方」もご参照ください。
食事形態の選択は、ご本人の安全と食事の楽しみの両立を目指して行います。以下の3つのステップで考えてみましょう。
食事形態の見直しが必要なサインは、日々の食事の中に現れます。以下のチェックリストで確認してみてください。
| チェック項目 | 該当する場合の目安 |
|---|---|
| 食事中にむせることが増えた | 飲み込む力の低下。食事形態の見直しを検討 |
| 食事に時間がかかるようになった(30分以上) | 噛む力の低下。一口大への変更を検討 |
| 食後に声がガラガラする(湿性嗄声) | 不顕性誤嚥の可能性。専門家への相談を推奨 |
| 体重が減少してきた(1ヶ月で2kg以上) | 摂食量低下。低栄養のリスクあり |
| 食べこぼしが増えた | 口唇閉鎖の低下。食事姿勢の見直しも必要 |
| 硬いものを避けるようになった | 咀嚼力の低下。一口大やきざみ食を検討 |
| 食事中に咳き込むことがある | 誤嚥の兆候。速やかに専門家へ相談 |
| 飲み物でむせやすい | とろみ剤の使用を検討 |
ゴールデンウィークにご家族が帰省される際は、一緒に食事をする中でこれらのサインを観察してみてください。普段離れて暮らしているからこそ、変化に気づきやすいことがあります。「食事形態を変更するタイミングは?」もご参考に。
きざみ食や一口大をご利用のお客様には、お届け時に食べやすさを確認するようにしています。「最近むせることが増えた」というお声があれば、すぐに店長や管理栄養士に報告し、食事形態の見直しを提案しています。ご家族やケアマネジャーさんへの連絡も迅速に行います。
食事形態の判断は、ご本人やご家族だけで行わず、専門家に相談することが大切です。主に以下の専門家がかかわります。
嚥下内視鏡検査(VE)は鼻から細いカメラを入れて喉の動きを直接観察する検査で、嚥下造影検査(VF)はバリウムを混ぜた食事を食べてX線で飲み込みの過程を撮影する検査です。いずれも痛みはほとんどなく、客観的な嚥下機能の評価が可能です。詳しくは「嚥下機能の検査にはどんな種類がある?」をご覧ください。
食事形態の変更は一気に行わず、段階的に進めることが望ましいです。たとえば、常食で食べにくくなってきたら、まずは一口大から始め、それでも困難な場合にきざみ食へ移行するという流れです。
重要なのは、必要以上にやわらかい食事に変更しないことです。厚生労働省も指摘しているとおり、咀嚼を行わない食事が続くと口腔機能がさらに低下し、「噛まないから噛めなくなる」という悪循環に陥る危険があります。オーラルフレイル(口腔機能の衰え)を防ぐためにも、「安全」と「機能維持」のバランスを保つことが大切です。
きざみ食と一口大は混同されやすい食事形態ですが、対象者も調理法も異なります。ここで改めて両者の違いを整理しましょう。
| 比較項目 | 一口大 | きざみ食 |
|---|---|---|
| カットサイズ | 2〜3cm角 | 5mm〜1cm |
| 対象 | 噛み切る力が弱い方 | 咀嚼力が大幅に低下した方 |
| 学会分類 | コード4相当 | コード2-2〜3相当 |
| 見た目 | 食材の形がはっきりわかる | 食材はわかるが細かい |
| 食塊形成 | 口の中でまとまりやすい | バラけやすく、とろみ等の工夫が必要 |
| 誤嚥リスク | 比較的低い(丸飲みに注意) | とろみなしでは高くなる可能性 |
| 食欲への影響 | 常食に近く食欲が維持されやすい | 見た目の変化から食欲低下の可能性 |
一口大からきざみ食への移行を検討するタイミングは、「一口大の食材でも噛むのに時間がかかる」「口の中に食べ物が残りやすくなった」「義歯を使っても噛みにくそうにしている」といった変化が見られたときです。ただし、きざみ食は口の中でバラバラになりやすいため、必ずとろみ付けやあんかけなどの調理上の工夫とセットで提供する必要があります。
きざみ食は「刻めば安全」という誤解が根強く残っていますが、専門家の間では以前から注意喚起がなされています。きざみ食の主なリスクは以下のとおりです。
細かく刻んだ食材は唾液と混ざりにくく、口の中で食塊(飲み込みやすいかたまり)を形成しにくくなります。とくに唾液の分泌が減少している高齢者では、この問題が顕著です。食塊がうまく作れないまま飲み込もうとすると、小さな食片が喉の隙間から気管に入り込む「誤嚥」のリスクが高まります。
食材を細かく刻むことで表面積が増え、空気中の細菌に触れやすくなります。とくに夏場は食中毒のリスクが高まるため、きざみ食の調理から喫食までの時間管理には特に注意が必要です。詳しくは「高齢者の食中毒予防」をご参照ください。
これらの工夫により、きざみ食であっても口の中でまとまりやすく、安全に飲み込める食事を実現できます。
配食のふれ愛 太子店では、常食・一口大・きざみ食・ムース食の4形態に対応しており、おかゆやとろみ付きへの変更も可能です。管理栄養士が監修した同じ献立を、お一人おひとりの嚥下機能に合わせた形態でお届けしています。
ここでは4月28日週の実際の献立を例に、食事形態ごとの対応をご紹介します。
| 食事 | 献立内容 | きざみ食・一口大での工夫ポイント |
|---|---|---|
| 朝食 | ミートボールとキャベツのクリーム煮、たたきごぼう、昆布の佃煮 | ミートボールは一口大に半割、きざみ食では細かくほぐしクリームソースでまとめる。ごぼうはやわらかく煮込み済み |
| 昼食 | 豚肉と豆腐の玉子とじ、大根のあんかけ、じゃが芋と鶏肉の炭火焼風炒め、三色炒め煮、たたきごぼう | 玉子とじはとろみがあり食塊形成しやすい。大根はあんかけでスムーズに飲み込める。じゃが芋は圧がかかると崩れるやわらかさ |
| 夕食 | アジの野菜入り甘酢煮、オクラのごま和え、さつま芋のケチャップ煮、ツナマカロニサラダ | アジは骨を丁寧に除去し、甘酢あんでまとめる。オクラのぬめりは天然のとろみで飲み込みやすい。さつま芋はやわらかく煮込み済み |
当店の献立は、きざみ食や一口大での提供を見据えて設計されています。今週の献立にも、食事形態を問わず安全においしく召し上がれる工夫が随所に盛り込まれています。
| 日付 | 主な献立 | 食べやすさのポイント |
|---|---|---|
| 4/24(木) | 煮込みハンバーグ(トマト)、菜の花とさつま揚げの味噌炒め、あさりとじゃが芋のクリーム煮 | ハンバーグはトマトソースで食塊形成しやすい。クリーム煮はとろみがあり安全 |
| 4/25(金) | いかの天ぷらカレー南蛮、ねぎとちくわのぬた | カレー南蛮のつゆがとろみの役割。ぬたのぬめりが飲み込みを助ける |
| 4/26(土) | にしんの塩焼き、大根煮、濃厚ポテトサラダ、海老の和風玉子とじ | 大根は煮込んでやわらか。ポテトサラダはなめらかでまとまりやすい。玉子とじはとろみあり |
| 4/27(日) | 和風ロールキャベツ、エノキ茸の煮浸し、味噌田楽、さつまいもサラダ | ロールキャベツはやわらかく煮込み済み。さつまいもサラダはなめらかで食塊形成しやすい |
このように、あんかけ・クリーム煮・玉子とじ・煮物といったとろみのある調理法を多用することで、きざみ食でも安全に飲み込める食事をお届けしています。「とろみ食とは?」もあわせてご覧ください。
食事形態(おかずの硬さ・大きさ)と並んで重要なのが、主食であるごはんの形態です。当店では通常の白飯のほか、やわらかごはん(軟飯)、おかゆ(全粥)、ミキサーがゆへの変更にも対応しています。
| ごはんの形態 | 水分量の目安 | 硬さ | 対象 |
|---|---|---|---|
| 普通飯 | 米1:水1.2 | 通常 | 咀嚼・嚥下に問題なし |
| やわらかごはん(軟飯) | 米1:水1.5〜2 | やわらかめ | 噛む力がやや低下した方 |
| 全粥 | 米1:水5 | トロトロ | 咀嚼力が大幅に低下した方 |
| ミキサーがゆ | 全粥をミキサーにかけたもの | なめらか | 嚥下が困難な方 |
おかずはきざみ食でもごはんは普通飯という方もいれば、おかずは常食だけれどごはんはおかゆという方もいらっしゃいます。おかずの形態とごはんの形態は独立して選択できますので、お気軽にご相談ください。
4月末のこの時期、南河内地域ではゴールデンウィークに帰省されるご家族が増えます。普段は電話やLINEでのやりとりが中心で、実際にご本人の食事の様子を見る機会がなかなか取れないという方も多いのではないでしょうか。
帰省時は、ぜひ一緒に食事をする時間を設けてみてください。食事中の様子を観察することで、前述のチェックリストに該当する変化がないかを確認できます。もし気になることがあれば、配食のふれ愛太子店にいつでもご相談ください。
食事形態の選択は安全な食事の第一歩です。当店では常食・一口大・きざみ食・ムース食に対応し、おかゆへの変更も可能です。ゴールデンウィークにご家族が帰省された際に、食事の様子を見て気になることがあれば、いつでもご相談ください。無料試食で食べやすさをお試しいただくこともできます。
ご家族から「親の食事形態を変えたほうがいいのか」「どの形態が合うのか分からない」というご相談を多くいただきます。こうしたご相談は無料試食を通じて実際の食事をお試しいただくのが最も確実です。常食と一口大の両方をお試しいただき、食べやすいほうをお選びいただくケースもよくあります。
配食サービスだけでなく、ご家庭で調理される際にも食事形態に配慮するポイントがあります。
食事形態を適切にしても、食べる姿勢が悪ければ誤嚥のリスクは残ります。以下の点に注意してください。
食事姿勢と誤嚥性肺炎予防の関係について、より詳しくは「誤嚥性肺炎を防ぐ食事の工夫」でも解説しています。
きざみ食にすること自体で栄養素が大きく失われることはありません。ただし、食べやすさの問題から摂取量が減ったり、とろみをつけるために水分が増えて栄養密度が下がったりする可能性があります。当店では管理栄養士がきざみ食の献立においても必要な栄養バランスを確保するよう設計しています。詳しくは「きざみ食でも栄養は十分に摂れる?」をご覧ください。
たしかにミキサー食のようにドロドロの状態になると食欲に影響しますが、一口大は常食とほぼ見た目が変わりません。きざみ食についても、当店ではあんかけや彩りの工夫で見た目の美しさを維持するよう心がけています。
はい、口腔リハビリテーションや嚥下訓練により咀嚼・嚥下機能が改善すれば、食事形態を戻すことは可能です。実際に、歯科治療で義歯を調整した後にきざみ食から一口大へ戻った方もいらっしゃいます。「食事形態は元に戻せる?」もあわせてご確認ください。
ムース食の特徴と、従来のミキサー食との違いについて詳しく解説します。
嚥下機能の評価方法と、食事形態の選び方のポイントを解説します。
誤嚥性肺炎の原因と、食事中にできる予防策をご紹介します。
きざみ食は単に細かく刻むだけではありません。食材ごとに刻み方を変え、口の中でまとまりやすいようにとろみをつける工夫もしています。今週の「豚肉と豆腐の玉子とじ」は、きざみ食でもとろっとした食感で食べやすい人気メニューです。「大根のあんかけ」もやわらかく煮込んであんをかけることで、スムーズに飲み込めます。